RD-5800-SSに魔改造貧脚ギア12-30Tを放り込む
魔改造貧脚スプロケットを作成し、スペックが足りないリアディレイラーで動かしてみる話
※この記事はシマノ公式の使用用途の範囲外を扱います。試される方は自己責任で。
沼が深いスプロケット
私の愛車のロードバイクは、中古購入時からフル105でフロントが52-36Tのセミコンパクトクランク、リアが12-25Tと令和の時代には重めのギアが入っている。購入して1年ちょい、激坂も休み休み、騙し騙しで乗ってきたが、風張林道の平均勾配12%に絶望した。さらには緩い斜度が続く、乗鞍の獲得標高に対して意外な楽さに気づき、ギアの変更を決断した。
感覚的にはあと2段、せめて1段欲しい。クランクを交換する場合、105グレードで最も軽いギアで50-34Tと、スプロケットが25*36/34=26.4T相当になるだけである。48-31Tや46-30Tを擁するGRXはフロントディレイラーの交換が必要であり、同じく46T-30T等を擁するスギノは価格面で却下した。
そこで比較的お手軽にローギアを増やせるスプロケットを交換することにする。CS-5800の12-25Tのロー側は21-23-25なので、この調子で1段足すと25*√(25/21)=27.28、2段足すと25*(25/21)=29.76となる。ゆえにロー側を30または28にしたい。ただしシマノが用意する11-30Tや11-28は11Tなんて踏めないので、各所でなされている12-25Tのトップ側と組み合わせることで12T始まりのスプロケットを作成する。*1折角なので巷と別の歯の組み合わせができないか、再確認の意味も込めてディーラーマニュアルに目を通す。
シマノの11Sスプロケットのディーラーマニュアルは以下である。
http://si.shimano.com/pdfs/dm/DM-CS0004-04-JPN.pdf (CS-9000/6800/5800)
https://si.shimano.com/#/ja/DM/RACS001 (CS-R9100/R8000/R7000)
これらを参照すると、12-28Tおよび12-30Tの作成ができそうだが、12-25T、11-28T、11-30Tについては105とULTEGRAとDURA-ACEで歯数は同じでもプロファイルが異なる。
12-25Tの場合
12B-13B-14A-15A-16A-17C-18D-19F-21B-23B-25A (105)
12B-13B-14A-15A-16A-17C-18B-19D-21B-23B-25A (ULTEGRA)
12B-13B-14A-15A-16A-17C-18B-19D-21D-23B-25A (DURA-ACE)
11-28Tの場合
11A-12A-13A-14A-15A-17B-19E-21D-23C-25B-28A (105)
11A-12A-13A-14A-15A-17B-19C-21C-23C-25B-28A (ULTEGRA/DURA-ACE)
11-30Tの場合
11A-12A-13A-14A-15A-17B-19E-21D-24A-27A-30A (105)
11A-12A-13A-14A-15A-17B-19C-21C-24A-27A-30A (ULTEGRA/DURA-ACE)
マニュアル眺めてびっくり、こんなに変える必要あるのか…??
さて、[12-25Tのトップ側]+[11-28T/11-30Tのロー側]で組み合わせる場合、12-25Tと11-28T/11-30Tで17Tの位置が同じため、どちらの17Tを使うかを選択できるように見える。
①12-25Tの17T(17C)を使う場合
このとき、懸念されるのはロー側、19C/19Eとの繋がりである。このうち、19Cについては各所でやられている通り、DURA-ACEの12-28Tに[12B-13B-14A-15A-16A-17C-19C-21C-23C-25B-28A]があるため、問題なく使用できると推測できる。19Eは、105の11-28T/11-30T以外に使用されていないため、17Cと19Eは公式で隣り合っているものはない。
②11-28T/11-30Tの17T(17B)を使う場合
懸念されるのはトップ側、16T(16A)との繋がりであるが、16Tを擁する11Sスプロケットは多くなく、12-25T、12-28T、11-23T、11-25T、14-28Tしかない。いずれも16Aの隣は17Aまたは17Cであるため、16Aと17Bは公式で隣り合ってるものはない。
したがって、公式で隣り合う歯を隣り合わせると以下の組み合わせに限られる。
・12-28T
[12B-13B-14A-15A-16A-17C][19C-21C-23C-25B-28A]
12-17は12-25Tならどれでも可、19-28はULTEGRAかDURA-ACE
・12-30T
[12B-13B-14A-15A-16A-17C][19C-21C-24A-27A-30A]
12-17は12-25Tならどれでも可、19-30はULTEGRAかDURA-ACE
つまり、巷の12Tスタートの改造ギアはそれぞれ唯一解であるということになる。また、ロー側では105が使えず、ULTEGRA以上を導入しなければならないこともわかった。これは財布には痛い。
さて、このどちらにするか。今の12-25Tではロー側も21T-23T-25Tとそこそこクロスレシオになっているが、坂道の場合はもう少し飛んでもいいと思っていた。よって12-30Tで、ロー側の3T飛ばしを試してみる。
ここまでリアディレイラーに全く触れて来なかったが、RD-5800-SSは公式には28Tまでで30Tに対応していないが、5800/6800/9000の11-30T使用はそこそこ実績があるので投入する。12-30Tであればキャパシティが11-30Tより1減るので使えるはず。
導入
上ではULTEGRAの11-30Tと書いたが、このスプロケットは現行世代にしかないので選択肢はCS-R8000の一択となる。DURA-ACEは知らん
早速届いたギアを手持ちのギアと組み合わせ…
ん…?
14T、欠けてね……??
幸いにも14Tは両者共通の14Aなので、R8000のものに変える。ついでに15Tも共通なのでR8000のものに変える。表面処理が5800とR8000だと全然違うな?
完成。結局12B-13B-14A-15A-16A-17C-19C-21C-24A-27A-30A(太字がR8000)となった。
組付け。チェーン長は元々インナートップでたるまないギリギリにセッティングされていたので変えなくて済んだ。Bテンションボルトの調整だけであっさり終了。なんか面倒になると覚悟してたので拍子抜けした。
アウターローでこれくらい。カツカツに見えるが普通に変速できるし多少余裕がある。アウターでロー側2枚は使わないけれど。
実走
今は亡き菰野ヒルクライムのコースで試走
— kafort (@kafortt) 2021年10月2日
ロー側が25Tから30Tになって、10%の坂でもシッティングで回せるようになって脚が残せる
第6回に出てたら132人中115位のタイムらしい pic.twitter.com/U6xOsjmBW7
鈴鹿スカイラインで実走してきた。タイムは初めて測ったので半分近い時間で走り切る*2ガチ勢の実力を思い知ることになった。インナーローの歯数が飛び飛びになるのは違和感無く使えたが、18Tが消えたのは平坦で多少違和感があった。
ちなみに獲得した位置エネルギーから出力をざっくり計算すると135W、PWRだと3W/kg。トレーニングもしてないしこんなもんでしょう。*3
余談
シマノ12Sコンポーネントが発表されたが、その11-30Tは[11-12-13-14-15-16-17-19-21-24-27-30]であり、今回の12-30Tに11Tが足された構成である。つまり、11Tを踏めない場合、この12-30で最新の12Sコンポーネントとほぼ同じ歯数((((インナートップを除く。ただしDi2はたすき掛けが制限されるため、どちらがいいとも言い難い))))を使うことができる。12Sスプロケットは[12-13-14-15-16-17-18-19-21-24-27-30]があると個人的には嬉しいが、105が12S化する頃には出るだろうか。それともGRXのようなスーパーコンパクトクランクがロード用にも降りてくるのだろうか。妄想は尽きない。
*1:11-28T/11-30Tのユーザーが12T/13T/16T/17Tを入れる例の方が多い気もする。参考:
シマノ スプロケット12-28T化はちょうかんたん | じて旅
*2:菰野ヒルクライム公式サイトのアーカイブ(https://web.archive.org/web/20180326202946/http://www.komono-hillclimb.com/index.html#5thPage)
*3:体重がおかしいのは本題と関係無いので割愛